僕を目掛けて飛んできた無数の光の矢は、
僕に当たる事もなく、
僕の周辺で突然消滅した・・・
ファウド「随分と乱暴な事をするなぁ」
まるで独り言の様にまた呟いて、間もなく、
一人の男が僕の目の前に現れた・・・
それを皮切りにした様に次から次へと僕が気配を感じていたとおり、
複数の男達が姿を現した・・・
山賊A「そこの小僧、その女を渡してもらおうか」
如何にも山賊みたいな格好をしていたので、
僕は勝手に山賊と思っているのだけど、
初めて会っていきなり、攻撃を仕掛けられ、
言われた言葉がそれだった・・・
ファウド「いきなり攻撃してそれっておかしくない?」
「まず聞きたいんだけど、おじさん達がこの人にケガをさせたの?」
僕は山賊達に言われて「はい、どうぞ」ってすんなり渡す訳はなく、
かと言ってすんなり断るのも、すでに大勢に囲まれてしまっていて、
怪我を負っている女性を守りながら戦うのも分が悪い・・・
少しでも女性の回復を少しでも時間を稼ぎたい所だから、
とりあえず山賊に対して質問をした・・・
すると山賊と見られる男が・・・
山賊A「俺達はその女を捕らえる為に雇われている」
「その女は重罪を犯し、様々な奴らに追われている」
「怪我を負わせたのは俺達ではないが、その女の生死を問わず、捕らえろと言われている」
「小僧、その女を助けた所で、またその女は狙われる事になる」
「下手をしたら小僧まで命を狙われるぞ」
「すぐに我らに渡した方が身のためだ」
思ってたより山賊は丁寧に答えてくれた・・・
しかし僕はその山賊の言葉を素直に信じる気は毛頭なく、
この女性を救う考えは変わらない、
何せもうすでに随分と攻撃されてしまったし、
見た目も山賊達の方が悪そうな雰囲気を出しているからだ・・・
ファウド「この女の人、そんなに悪い事をしたんだ・・・」
「ちなみに、どんな悪いことをしたのか教えて欲しいんだけど・・・」
僕は少しでも時間を稼ぎたいので、どうせ教えてはくれないだろうと思いながら、
山賊Aに訪ねて見た・・・
山賊A「その女は我が国の王の命を狙い、更に王家の秘宝を盗み出した」
「手荒な真似はしたくないのだが、力づくでもその女を渡してもらおうとする」
もう既に僕は手荒な真似をされているのだけど、
忘れちゃったのかなこの人達・・・
ちょっと話はもどるけど、
最初に僕が攻撃された時、生い茂った木々の中で突然無数の光の矢が僕に向かって富んできたんだけど、
その光の矢は僕に当たる事なく消滅した・・・
実はどうして飛んできた無数の光の矢が消滅したのかと言うと、
僕が使った中級の魔法の「リカバリー」は、ある程度の攻撃も防いでくれる様に、
同時に多少の結界も周囲に張られるのだけど・・・
もしも自分の魔力より強い攻撃をされたら、あるいは物理的な攻撃で、
僕の魔力より強い攻撃をされたら、この薄っぺらな結界はすぐに破れてしまい、
その上魔法は解かれてしまうので、ピンチな状況には変わりはない・・・
山賊達は、戦いは多少は雇われるほどなので?その事をどうやら知っている様だったのだろう、
どうして、(雇われるほどなので?)と言う部分に疑問をつけるのかと言うと、
もしかしたら単なる賞金首目当てで山賊達が嘘を付いている可能性があるから、
そして何より見た目で、どうにも胡散臭いからだ・・・
しかし僕は、このままでは状況はとてもまずい事には変わりが無いので、
今発動している「リカバリー」を解く事のないように、
更に、発動条件である構えを崩す事なく、更に呪文の詠唱に入る事にした・・・
相手に悟られぬように小声で・・・
ファウド「大いなる力を持つ神々、我が声よ届きたまえ、失礼承知でまず問いかける、火の神バルカンよ、北西の風の神スキロンよ、
異なるふたつの力を示し・・・」
僕が今唱えている魔法は、火の神と風の神の力を借りた、
下級の魔法なんだけど、一般的に防ぐには、剣で振り払うか、
もしくはよける、あるいは防御魔法を使って防ぐとか、
結構よけ方はあるんだけど、当たるととっても痛かったりする・・・
というよりも、下級魔法とは言え、
当たると痛いどころでは済まなくて、
当たると一瞬全身に炎に包まれ、
普通の人ならパニックになるだろうし、
やはり火の力の魔法系のものだからとっても熱くて火傷だってするんだ!
ちなみに一つの魔法を維持しながらもう一つの魔法を発動すると言うのは、
魔法使いでも、ちょっと魔法をかじった程度の魔法使いではとっても出来なくて、
よほど訓練を積まなければいけないし、
ある程度のオリジナルみたいなものもあったりして、
この年でそんな事が出来る魔法使いは多分指で数える位しかいないと思うし、
そんな所がちょっぴりじまんだったりしたりして。
ファウド「・・・発動せよ、スピリットファイヤー」
僕が最後に言い放ったスピリットファイヤーと言う言葉とともに、
僕を中心に炎の矢がまるで矢の如く山賊達に飛んでいく・・・
見た目は山賊だから、こんなの避けれっこないと発動の瞬間僕はやったぜと思った・・・
しかし思わぬ事に僕が放った「スピリットファイヤー」は、
山賊達に、ひとつも当たることが無く。
それと同時に僕は山賊Aの言葉を思い出した・・・
僕が放った魔法が誰一人も当たることが無い瞬間、
僕は一瞬、もうどうしようかと思った瞬間だった・・・
何故か誰一人僕の放った魔法は当たる事がなかったのに、
山賊達の方から緊張感が僕に伝わってきた・・・
そしてそんな僕でさえ、
・・・氷つめて、
蛇がカエルを捕食するように・・・
僕は獲物の気持ちの様な気分でカラダが緊張した・・・
それと同時に、僕もパニックに・・・
怪我はいえていないはずの女性が突然放った殺気はそれほどのもので、
山賊達が言っていた事が真実なのかも知れないと思うほどでもある程だった・・・
それと同時に山賊達は身構え、
同時に山賊Aは何かの魔法を詠唱し始めた・・・
山賊A「大いなる火の神アグニよ、我達の前に大いなる力を持つものが立ち塞がる、
大いなる火の神アグニさえも脅かすであろう程の力を持つもの、
先ずは我が力を顕現を示すため、大いなる火の神アグニの力を借りたい・・・」
山賊B「そして我もそれに続く・・・」
山賊C「そして我もそれに続く・・・」
山賊D~・・・「そして我も続く・・・」
聞いていると、どうやら山賊達が唱えている魔法は一人では詠唱は出来ない魔法で、
複数の魔法使いが集まって詠唱をする、クラスは上級魔法だと見て間違いなさそうだった・・・
ちなみにこの世界では上級魔法は、対魔族用に開発された魔法で、
通常の人間に対しては普通であれば発動はさせないものぐらいなのだが、
それだけに威力は計り知れない・・・
完全に山賊達は僕まで巻き込んで、本気でこの女性を消そうとしているつもりらしい事が今になって分かったのだが・・・
これだけ上位の魔法を使えるのなら、最初から僕達に向けて詠唱をして居れば良かっただろうと、
冷静に考えてしまっている僕も・・・
さすがに山賊達が悪人かそうでないのかわからなくなって来たのだが、
ともかくこのままでは危険なので、
僕が先ほど使った魔法より早く発動出来る魔法で、
確実に一人気絶をさせられる魔法を詠唱し始める・・・
と言うのは、集団魔法と言うのは、欠点がいくつか有り、
先ず一つは、詠唱に時間が掛かる事・・・
そして、一人が掛けてしまえば、発動は出来るものの、
誰かがそれを補い、詠唱をしなくてはならないと言う欠点が・・・
しかし僕が先ほど発動したスピリットファイヤーは山賊達に当たる事も無く消えてしまった・・・
という事は低級魔法では太刀打ち出来ない程の使い手で、
ある程度の魔法は効かないと言う事が分かったからだ・・・
そして集団魔法魔法は、
ある程度の魔法では跳ね返してしまうと言う防御結界もある。
しかし僕はとても嫌な感じがしてどうしようも無かった・・・
- 2012/04/11(水) 13:47:29|
- 小説
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